これから1週間滞在する宿には、4つのバスルームがある。
共用バスルームだから宿泊者がシェアするが、どこを使っても構わない。
バスルームの快適さは、暮らしの快適さに直結する大事なポイントだ。
どんな感じか、それぞれさっとチェックした。
ピンクのバスルーム

きれいだが、少しドブ臭い。
黄色のバスルーム

きれい。特に問題なし。
青のバスルーム

きれいだが、薄暗い。
緑のバスルーム

きれい。特に問題なし。
全部きれいで安心した。
でも、自然と使いたいのは黄色と緑に絞られる。
ドブ臭いのより、薄暗いのより、当然問題なしのがいい。
初日
部屋から一番近かった緑のバスルームでシャワーを浴びた。
お湯も、水圧も、問題なくシャワーを浴びられた。アタリだった。安心した。
2日目
4つのバスルームがあるが、昨日使った緑のバスルームがよかったので、そこへ行こうとした。
間違いないのを知っているから。
でも、相方が「今日は違うところを使ってみようかな」と言う。
「え…」
昨日と同じでいいやと思っていたが、君がそうするなら、私も違うところを使ってみようかな。
2日目は、黄色のバスルームに行ってみた。
昨日よりも、快適だった。
昨日はシャワーヘッドからお湯が多方向に出て少し使いにくかったが、今日はまとまって出るので流しやすい。


さらに、昨日はフックが1つだけだったのに対し、今日はフックが3つもある。


物を便器のフタの上に置かなくて済む。
おまけに、シャンプーなどを置くスペースまであるではないか。

シャワーも、室内の環境も、昨日より今日の方が快適だった。
ハッとした。
知らず知らずのうちに、安定を求めていた。
新しいところを試すのではなく、知っているところに落ち着こうとしていた。
つまり、“現状維持”。
新しい場所に行くのは、少しの勇気がいるから。少しの躊躇いがあるから。
相方が、「違うところを使ってみようかな」と言わなければ、私は1週間ずっと緑のバスルームを使い続けただろう。
そうしたら、そこよりもっと快適な場所があることに、ずっと気付かなかっただろう。
今の場所は、自分にとって、一番いい場所?
新しい一歩を踏み出さなければ、他の場所を経験してみなければ、それはわからない。
ずっと緑のバスルームを使い続けて、自分の中では「ここが一番♪」と思っていても、本当はもっといい場所があるかもしれない。
現に、今は黄色のバスルームが一番いいと思っているけど、ピンクはどう?青はどう?
わからない。
だって、試していないから。
ピンクのドブ臭さは、明日には消えるかもしれない。
青は見た目は薄暗いけど、実は一番清潔で機能的かもしれない。
一見「いやだ」「遠ざけたい」と思っても、実際試してみたら、「案外いいかも」と思うかもしれない。
逆に、ピンクはいつまで経ってもドブ臭いままで、さらにはドライヤーも壊れているかもしれない。

青も、薄暗い上に、フックは壊れているかもしれない。

もしそうだった場合、ショックを受けるだろう。後悔するかもしれない。
でも、他を試したからこそ、より説得力をもって、自信を持って、「黄色がいい」と言えるのではないか。
だから、失敗を無駄や損だなんて考えない。
無駄な経験なんて、何もない。
遠回りして、揉まれて、それでこそ見えてくるものがある。
結局、自分でいろいろ経験してみないとわからない。
滋賀は好きだ。自然がいっぱいだし、湖岸道路をドライブするのは気持ちいい。
京都も好きだ。歴史的な建築物が多くて風情があるし、おしゃれなお店へもすぐ行ける。
でも、他のところで暮らしたことがないのに、「そこが一番いい」とは言い切れない。
(仕事も同じ。教師しか経験したことないのに、それが自分にとってぴったりの仕事かどうかはわからない。もっと向いている仕事があるかもしれないし、やっぱり教師が向いているかもしれない。)
日本はもちろん好きだけど、個人的にはルワンダの方が住みやすい。気候がいいから。
でも、じゃあ今すぐ「ルワンダに住もう」って言える?
言えない。
長期間暮らしたことがある国はルワンダだけだから。
もっといいアフリカの国があるかもしれない。(いつかアフリカのどこかに住みたい)
はたまた、中南米の国を気に入るかもしれない。
私は大好きになったあの都市が、ある旅人はそうでもなかったと言う。
ある旅人は「微妙だった」と言った場所も、私は「最高だった」と感じた。
人の意見は参考にはするが、鵜呑みにはしない。
感じ方は人それぞれ。
自分の目で見て、自分の肌で感じてみなければわからない。
だから、私は探しつづけたい。
住みたいと思うくらい、気に入る場所を。
やりたいと思う仕事を。
自分が本当に、トキメクことを。
それが、旅をする理由の一つ。
全てを知るのは無理だけど、いろいろ経験し、いろいろ比較した上でなら、ある程度自信を持って言えるはず。
“これが自分に合っている”と。
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