マイホームが夢だったけど、マイホームがいらなくなった

ぼやき

マイホームを持つのが夢だった。

実家は古い日本家屋だ。たたみの部屋があり、まんまんちゃん(仏壇)に毎朝仏飯を供え、手を合わせるのが習慣。

手作り小物やお菓子を撮るために家中映えスポットを探すが、見事に一つもない。なんなら、ルワンダの家の方がかわいく撮れた。

それがコンプレックスというほどではないが、どちらかというと嫌だった。友達の家の綺麗なリビングや広いお風呂、1階、2階の両方にトイレと洗面所があるのなんかを見ると、羨ましく思った。


庭の松の木や、井戸水や、石灯籠や信楽焼のたぬきより、新しくおしゃれな家の方がよかった。

いつか結婚して、マイホームを建てて…

そんな理想がずっとあった。

おしゃれな家具を置いて、かわいい食器に料理を並べて、“丁寧な暮らし”を、こだわったマイホームで送るのに憧れていた。

住居建築のテレビ番組を見るのが好きだったし、インスタでどんな家がいいか調べたり、結婚してもいないのに住宅展示場に遊びに行ったりしていた。(迷惑)

家を買うには大体これくらいの予算と期間が必要で、住むのはこのエリアで、、

そんなことを調べてからルワンダに飛んだ。

でも、ルワンダで生活し始めてから4〜5ヶ月が経った頃、自分の中で大きく考え方が変わろうとしていた。

人生の迷い期|moe
協力隊員としてルワンダに派遣されて7ヶ月。 自分の人生が分からない。 絶賛人生の迷い期である。 高3のとき、協力隊に行こうと決めてからの人生計画はこうだった。 教員として実務経験積んで、現職参加して、協力隊行って、結婚して、出産して… 次の...

(↑渡航後7ヶ月目の記事。迷いすぎてぐちゃぐちゃな文章だけど、これはこれでリアルなので、この記事は新ブログに移行せずそのまま残そうと思う。)

今のままでいいのだろうか、自分が人生をかけて本当にしたいことは何だろうか。

そんなことを考え込むようになった。

そんな時期に、バスで1時間ほどの隣町に住む、日本人ご夫婦のお宅にお邪魔する機会があった。初対面だったが、お昼ごはんをご馳走していただくことになった。

バス停から徒歩でお宅へ向かう。しばらく歩くと、ここがアフリカのルワンダであることを忘れるほど綺麗な住宅街に辿り着いた。まるで、ヨーロッパにいるのかと錯覚するような雰囲気。人が少なく、緑が多く、「ムズング!(白人)」だとか、「アマファランガ(お金くれ)」などという人はいない。整えられた石畳の道には、爽やかな風が吹いている。

到着したお宅は一軒家で、ドアを開けると、ダイニングとリビングがつながった広い部屋があった。

ごはんの仕上げを手伝いにキッチンへ行くと、料理をするには十分なスペースとルワンダ式ガスオーブン。戸棚には、素敵な食器たちが並べられていた。

ジブリの世界に入り込んだかと思うような、素敵空間だった。

お昼ごはんは、手作りサンドイッチとたまねぎのスープ。

サンドイッチのパンは、キッチンのオーブンで焼いた手作りパン。庭で採れた自家製の葉野菜と、地方ではまず手に入らないベーコンをはさむ。

たまねぎスープは、そのベーコンとたまねぎをじっくり煮込み、味付けは塩のみ。たまねぎの甘みがあるから、塩だけで十分だった。



食卓に並ぶ、かわいい食器に盛り付けられたシンプルで美味しい料理たち。


食後には、ダイニングからリビングのソファに移動し、コーヒーと手作りクッキーをいただきながらゆっくりお話をした。

幸せだった。

帰路につくバスに乗りながら考えた。

自分がこだわっていた「マイホーム」って、なんなんだろう。


色々な理由から、アパートやマンションに住むのは嫌だった。だから、一軒家に住みたいのならマイホームを建てるものだと思っていた。



無知だった。


私がしたい暮らしは、別にマイホームを持たなくてもできるんだ。貸家で十分じゃないか。むしろ、その方が、色んな場所に住めるからいいではないか。


今はそう思っている。ルワンダで生活した経験により、自分の中で色んなことが変わったが、

「絶対に」マイホームが欲しい。


その思いが覆されるとは、ほんとに、人の「絶対」なんか信用できない。


マイホームは、人生の大きな買い物だろう。

自分の人生で、何にお金を使いたいのかも考えるようになった。

ルワンダに行ってからは、全然お金を使わなくなった。

だって、バナナは5円、アボカドは10円で買えるのだもの。いもは1キロ50円、米は1キロ170円だ。首都のキガリに行って買い物をしたり、ホテルに泊まったりしなければ全然お金を使わない。1ヶ月100ドルあれば事足りた。

1年8ヶ月間という決まった期間だったから、家の家具や小物も、元からあるもので十分だと思っていた。

日本にいたときは服が大好きだったが、ルワンダでは既製品の服はほぼ買わなかった。服も着飾るのも好きだったが、キガリの大きい(とされている)モールに行っても、欲しいと思う服はなかった。

だから、郷に入っては郷に従えで、アフリカ布の服ばかり着ていた。スカート1着作るのに約600円、ワンピースは約1200円。安い。そのうち服は自分で作るようになったから、必要なのは布代だけ。スカートは約240円、ワンピースは約480円だった。安すぎる。

ルワンダでファッションに使ったお金なんて、1年8ヶ月間で、総額1万円にも達していないんじゃないか。実際に計算したわけじゃないから確かではないが。なんで今まで服にあんなにお金を使っていたんだろうと、正直馬鹿馬鹿しくなることもあった。気に入った服が1万円なら安いと思っていたし、3万、5万と使うこともあった。

もちろん、お金の使い道は人それぞれなので、そこを否定するわけではない。服が毎日を豊かにすること、自分を好きにさせてくれることもよく分かる。

※ルワンダから旅行でヨルダンに行った時は、発展した煌びやかな街、綺麗な人々の中に薄汚れたキテンゲ日本人という状況にさすがに恥ずかしくなり、首都アンマンの梅田(ショッピングモール)でちゃんとしたワンピースを買った。

ここで急だが独り言。
(全部独り言なのだけれど)

お金がないと言う人がいる。
5時間がないと言う人がいる。

「お金がない」は、実際にお金がないわけではない。

(それに使う)お金がない」の略だ。

「時間がない」は、実際に時間がないわけではない。

(それに使う)時間がない」の略だ。


この発言は、今後自分の首を絞めることになりそうだが、事実、自分はそうだ。

※ぼったくられ、本当にお金がない時期も確かにあったが。

大学生の時は、よく「お金ないお金ない」と言っていた気がする。バイトを4つかけもちするほど働いていたから(何故)、お金がないわけではなかった。


でも、あなたと伊豆旅行に行くよりは、海外旅行のためのお金を貯めたかったし、わいわい大人数の飲み会に行くよりは、大切な人とハーブスのケーキを3回食べる方がよかった。

社会人になり、仕事はとても忙しいが、会いたい人に会うためなら週末に関東にも行ける。

何が言いたいかというと、『お金や時間は自分が使いたいことに使う』ということだ。

…当たり前すぎて改めて言うまでもない。

私が一番惜しまずにお金を使うのは、海外旅行だ。

それは日本にいたときから、大学生の頃から変わらないことで、仕事も、アルバイトも、海外に行くために頑張っていたと言ってもいい。

今はそれに、カメラが加わった。

どちらも安いものではない。というか高い。数万円、数十万円というお金が必要になる。


「高いからいいカメラを買わない」
「円安だから今は海外に行かない」

このような考えもあるだろう。

でも、それなら、私が働く意味はない。



やりたいこと、欲しいものに使わないお金を稼いで、何になるのだろう。


写真を続けていれば、もっといいスペックの機種が欲しくなるのは当然で。もっと色んな種類のレンズが欲しくなるのは当然で。新品や綺麗さにはさほど拘らないから、買うのはいつも中古だけれど。

海外旅行は、行けるときに行かないと。
これは、コロナがあってから強く思うようになった。「またいつか」で先延ばしにするのはもったいない。今しか行けないかもしれないのだから。

いつ、渡航が規制されるか分からない。
いつ、身体が悪くなるか分からない。
いつ、親が倒れるか分からない。
いつ、トルクメニスタンの「地獄の門」が立ち入り禁止になるか分からない。


行きたいところは、行けるうちに。

もちろん、散財や豪遊したいのではない。経験や自己投資など、自分にとってそれが価値あるものと思うなら、そこは惜しまずに使うべきだ、と言いたいのだ。何でもかんでも欲しいものを手に入れるのとは違う。そこは、自分で考え、取捨選択していかないといけない。

帰国後すぐ、カメラを買い替えた。新しいミシンも買った。8月には海外旅行に行く。


大きいお金を使っているように見えるかもしれないし、そう言われるとこともある。でも、普段の生活は質素なのだと弁解したい。親に入れている生活費、スマホ代、ガソリン代、保険料金、そのような支出を除けば、あとはポイント生活だ。

帰国して約3ヶ月になるが、新しい服は1着も買っていないし(断捨離してきたつもりがまだありすぎる)、化粧品やスキンケア用品も一切買っていない。できるだけご飯は家で食べるようにしているから、外食も少ない。NetflixとApple Musicも解約した。


1万円の服を5着買うなら、5万円の露天風呂付きの部屋に一泊したい。

安い食べ放題の焼肉に3回行くなら、お高めの焼肉に行き、遠慮せずにユッケとビビンバと冷麺を注文したい。

エンビロンの化粧水とクリームを買うなら、KENKOのレンズフィルターが欲しい。

2万円の綺麗めバッグを買うなら、カリマーのバックパックが欲しい。

欲しい絵本はメルカリでいい。

○十万のカメラは買うけど、たった200円のミシン糸を買うのに躊躇っている。

今は、高い服も、高いスキンケア用品も、デパコスも、綺麗めバッグも、いらない。いい車も、Apple Watchも、そして、マイホームも。

(前はどれも欲しかったけど)

欲しい物を買うために、やりたいことをするために、節約している。
自分が本当に必要なものにお金を使いたい。

6月のボーナスで、新しいレンズを買おうと思っている。


頑張ってせっせとこの記事を書いたのは、買っていいのだよ、買いなさい、と、自分に言い聞かせるためである。


この記事は、JICA海外協力隊として派遣されていたルワンダから帰国・復職して3ヶ月後に書いたものです。

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